【事件】「起」 「佐藤梢さんは昨年7月1日、岩手県川井村の沢で遺体となって発見された。司法解剖の結果、死因は窒息死。左の唇部分には殴られたようなあともあった。」
【警察の見解】「承」 「指名手配されたのは知人の小原勝幸容疑者(28)。6月28日の午後10時半ごろ、梢さんを呼び出し、遺体が発見される1日までに殺害、死体を遺棄したとみられている。」
【意外な展開】「転」 「 しかし、この事件を丹念に取材していくと、警察の見立てには、いくつもの疑問が浮かぶのだ。
まず、小原と被害者、佐藤梢さんとの関係だ。この事件では、もう1人、同姓同名の佐藤梢さんが登場する。女性2人は高校の同級生。小原とその友人が2人をナンパし、小原は、事件の被害者ではない佐藤梢さんの方と昨年2月から付き合っていた。
こちらの佐藤梢さんは小原の借金の保証人で、小原を被害者とする恐喝事件にも関わっている。
一方、殺された方の佐藤梢さんと小原は、単なる知り合い程度の関係だ。確かに、殺された佐藤梢さんは死亡推定時刻の前に小原に連れ出され、行動を共にしていた時期がある。しかし、小原には交際もしていない佐藤梢さんを殺す動機がないのである。
私は生き残った佐藤梢さん、つまり、小原の交際相手だった梢さんに話を聞いた。その証言は衝撃的だ。
「梢ちゃんは、私と同姓同名だったばかりに私の身代わりで連れ出されて殺されたのだと思います。そのことは刑事さんも知っています。警察はすべてを知っているのに何かを隠しています」
【さらに意外な展開】「転々」 「 死亡推定時刻も曖昧だ。
マスコミ報道によると、被害者の死亡推定時刻は、岩手医大法医学講座を持つ後藤泌尿器科皮膚科の後藤医師によって、「平成20年6月30日ごろから7月1日ごろ」と検案されている。
この間、小原は弟夫婦の家に身を寄せ、高校時代から慕う友人を訪ねたりしている。立派なアリバイがあるのだ。
ところが、岩手県警宮古署捜査本部はその後、死亡推定時刻を「梢さんが小原に連れ去られた6月28日から遺体となって発見された7月1日までの間」と拡大してしまうのだ。 」
【関係者が口を開きはじめる】「……」 「それはちょっと、前代未聞の光景だった。13日の岩手県盛岡市の教育会館。三陸ミステリーといわれ、謎を呼ぶ佐藤梢さん殺しに関し、ナント、指名手配されている小原勝幸容疑者の関係者が一堂に会し、警察に「しっかりとした捜査」を求めたのである。岩手県警はどう応える?
◇
殺された佐藤梢さんは殺される直前、小原容疑者に呼び出された。梢さんの遺体が発見されたのは昨年7月1日午後4時半頃。小原はというと、2日午前9時半ごろ、岩手県内の鵜ノ巣断崖で最後に目撃された後、崖に靴などを残し、姿を消す。偽装自殺による逃亡とみた岩手県警は小原を指名手配し、懸賞金100万円をかける。
これが事件の経緯である。さて、記者会見したのは小原の弟、小原を鵜ノ巣断崖に車で送った親戚H、梢さんの死亡推定時刻に小原と一緒にいた人物、警察が梢さん殺害の現場とみている小原の車(自損事故を起こして放置されていた)の第1発見者O、そして、小原が付き合っていた佐藤梢さん(殺された佐藤梢さんと同姓同名)と、彼女の父親の6人だ。佐藤梢さんはこう言った。
「私たちはみんな警察に不信感を持っています。しっかりとした捜査をして欲しい」
私は、13日会見に応じた6人を中心に、事件の関係者を総当たりで取材してきた。それで分かったのは、警察の捜査にはいくつものおかしな点があることだ。
例えば、小原は6月29日に右手を大ケガし、29日の夜7時ごろ、弟夫婦と一緒に病院に行っている。イラだって壁にコブシを打ちつけたのか、握力はゼロに近い状態だった。岩手医大法医学講座が提出した、殺害された佐藤梢さんの死亡推定時刻は6月30日から7月1日だから、この一事で小原の容疑は怪しくなる。しかも、この間、小原は会見にも出てきた人物の家にいて、この友人の家を出た後に自損事故を起こす。警察は、この車こそ殺害現場とみているのだが、自損事故の第1発見者で、車の中にベタベタ指紋を残した人物Oは警察から何の事情も聴かれていない。この人物は記者会見で「疑われるはずの自分が事情を聴かれないのはおかしい」と指摘した。
さらに、小原が偽装自殺した鵜ノ巣断崖に送っていった親戚H。会見では「断崖に向かった小原は軽装でポケットも膨らんでいなかった」「カバンや靴も持っていなかった」と証言した。だとすると、靴を崖に残した小原はその後、はだしで逃走したことになる。こんなことがありうるのか。
明らかに誰かが偽装自殺を手伝ったのである。私は、梢さん殺しには別の真犯人がいるとみる。警察はなぜか、その人物について、見て見ぬフリをしているように感じる。その背景に何があるのか。自分たちの捜査ミスを隠蔽するためであるとしたら、到底許されることではない。」
★以上、ゲンダイ・ネット「未解決事件の“闇”に挑む」by黒木昭雄
http://gendai.net/?m=view&g=syakai&c=020&no=41179 http://gendai.net/?m=view&g=syakai&c=020&no=41194 岩手県警は何を隠そうとしているのだろう。
非常に気になる事件である。
【不謹慎な妄想】 普通の本格ミステリなら、この後、小原の死体が見つかり、名刑事の推理で真犯人があぶり出されるのだろうか。ちょっとひねったノワール小説なら、事件は岩手県の政治の暗部に及び、この事件の捜査を指揮する本部長と岩手県のフィクサー、さらに川井村開発事業に絡む政財界の腐敗へと発展して、真相に迫りかけた刑事の前で、真犯人は共犯に射殺され、共犯も自殺して、真に糾弾されるべき人間は高笑い。刑事は理由もなく東京の警視庁勤務に栄転となって、同僚が「東京で元気でな」とか言って別れるシーンで幕となる。1980年代のバイオレンス物なら、犯人に仕立てられそうになった小原は滝つぼに投げ込まれそうになったところを逆に相手を投げ込んで生き延びる。そして盛岡のドヤ街に身を潜め、復讐の牙を研ぐ。そんなとき、ふとしたことから死に掛けのヤクザと知り合い、トカレフ一丁・白鞘のドス一本・米軍の手榴弾三個・現金1千万円を遺品として受け取った。遺品を武器に小原は自分を罠にはめた人物の探索と、その人物への復讐のために立ち上がる。クライマックスは盛岡郊外に広大な敷地を占め、周囲を三メートルの塀で囲んで、常時ヤクザ百人が警備する「砦」に殴りこみかける小原の死闘となる。半村良的な伝奇小説なら、この事件を追っていたフリージャーナリストは、偶然、小原なる人物の家が「大久保家文書」なる文献を保管していたことを知る。どうやら小原はこの古文書の内容を知ってしまったために謀略の罠にはめられたらしい。やがて、小原の死体があがって、その死体に「葵の御紋」が残されていたと知った主人公は「大久保家文書」を追い始める。様々な妨害と奇怪な出来事と戦った末に主人公は遂に「大久保家文書」の隠し場所にたどり着いた。古文書を開いた主人公が知ったのは、孝明天皇は大久保利通に毒殺され、明治天皇も親王時代に毒殺されて、後醍醐天皇の直系の末裔とすりかえられたという、室町時代と幕末、明治をつなぐ恐るべき日本暗黒史であった。愕然とする主人公の前に大久保利通の子孫【現首相】が現われて尋ねる。「ここで川井村事件の真犯人として死ぬか、それとも我々の結社の一員となるか」。・・・半年後、週刊文潮で野党第一党党首のスキャンダルを追う主人公の姿があった。読者に胸焼けのような絶望を与えて「完」。平山夢明さん風のホラーなら【以下、公序良俗に反する妄想が続くため削除/要町奉行所】
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