07/10/2009

風雲千早城(1153)

今日も農耕的に仕事をした。

・昨夜も遅くから朝近くまで仕事したが、頭が痛くなってきたので止めて寝た。

・まず午前8時半に一度起床。長男がうるさい。バイトでガテン系のおっさんたちに怒鳴られるのが面白くないのと、睡眠不足で、母親に当り散らしている。やっと静かになったと思ったら某主党の宣伝カーがうるさい。やっと静かになったと思ったらパトカーがうるさい。やっと静かになっと思ったら、さおだけ屋がうるさい。やっと静かになったと思ったら(以下リフレイン)・・・

・何度か起きようとして妻に阻止されて、ようやく午前11時半に居間で着替えて早めの昼食(兼朝食)を摂る。

・午後2時より池袋で秘密の打ち合わせ。ひぐちあきおさんそっくりの人がいるな、と思ったら、なんと本日の秘密の打ち合わせ相手の一人だった。ひぐちさんに似た人なら良い人に決まっている。と言う訳で、初対面なのに話は極めてスムーズに進んだ。

・二時間半の打ち合わせの後、炎天下を歩いて要町まで帰る。

・途中、うぐいすアンパンと白アンパンを買う。

・一休短編のゲラが出たので、今夜は、ゲラのチェックと、「魔京」の執筆と二本立て。アンパン食べて頑張ろう。

・とりあえず、これから酒饅頭と黒糖饅頭を食べて、脳に糖分を補給し、少し仮眠する。

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07/09/2009

風雲千早城(1152)

今日も農耕的に仕事をした。

・昨夜も遅くから朝の8時まで仕事。六日間呻吟していた『魔京』はようやく動き出す。しかし幕末には覚えなきゃいけない「屋」が多すぎる。「寺田屋」「池田屋」「近江屋」「酢屋」・・・。もう一つにまとめてくれ、と言いたい。昔見たコントで、まず寿司屋にハンチングを被って映写機とリール缶を抱いたヤクザ風の男が「映写会はこちらですか」と尋ね、「何だか知りませんが、二階でお客さんがお待ちですよ」と応えると男は人目を気にしながら階段を上っていく。次に芸者たちがやってきて賑やかに二階に上り、さらに修学旅行の旗を持ったガイドと学生服の生徒たちが「こっちだ。こっだ」と二階に上る。このあたりで首をひねった板前が「何の集まりなのかな」と階段の上を覗こうとすると、突然、ガラッと引き戸が引かれて、近藤勇が「池田屋はここかッ」と叫んで新撰組を引き連れて、刀を下げて二階に駆け上る、というのをやっていた。オチは忘れたが強烈なコントだった。小林信彦によればシャボン玉ホリデー時代には吉良上野の首を取った赤穂浪士が「いざ、勝ち名乗りをあげようぞ」と言って「播州赤穂浪人、大石内蔵之助!」「同じく大石主税!」「大高源吾!」「板垣退助」「大隈重信」「吉田茂」とデタラメな名乗りになっていく異次元のギャグがあったそうだ。はかま満緒が書いたコントらしいが、このコントの影響は吾妻ひでおや山上たつひこの漫画にまで脈々と生きていた。いや、いがらしみきおの四コマにも相当、この流れの作品があったなあ。コントというのは消費物のように思われがちだが、まこと天才の作品は名は残らずとも、作品の心は後代にまで伝えられるものなのである。

・そんなことはどうでもよくて、8時に寝た私は、午後6時に起床。妻の作った弁当をモソモソ食べて机に向かった。

・で、ウォーミング・アップに白井恵理子の「それゆけ劉備くん/赤壁オリンピック」「劉備くん/青天の赤壁」を読み始める。が、これ、厚いね。本当にたくさんの四コマが収録されてて一気読みできない。おまけに一々「あはははは」と声を出して笑うので、さらに前に進めなかった。そのうちに仮眠の時間が来たか、電池が切れたように眠くなり、午後9時から午後10時半まで仮眠。

・午後10時半、夕食。「こんなに遅い晩飯アリかよ」「太っちゃうよ」「もはや夜食だ」という長男・二女・長女の罵倒を笑って聞き流し、ご飯を食べさせる妻はエラい。だが、いつも思うのだが、妻は一日部屋の奥でパソコンに向かって何をしているのだろう。実はネット世界のすっげえ一部で知られてる釣り師とかネット右翼だったら……コワイと思う。

・歯は磨いた。これから風呂に入り、パジャマに着替えて、また朝まで「魔京」を書こう。あと三回で完結だ。

・がんばるぞっと♪

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07/07/2009

風雲千早城(1151)

今日も農耕的に仕事をした。

謎の「川井村事件」

【事件】「起」
「佐藤梢さんは昨年7月1日、岩手県川井村の沢で遺体となって発見された。司法解剖の結果、死因は窒息死。左の唇部分には殴られたようなあともあった。」

【警察の見解】「承」
「指名手配されたのは知人の小原勝幸容疑者(28)。6月28日の午後10時半ごろ、梢さんを呼び出し、遺体が発見される1日までに殺害、死体を遺棄したとみられている。」

【意外な展開】「転」
「 しかし、この事件を丹念に取材していくと、警察の見立てには、いくつもの疑問が浮かぶのだ。
 まず、小原と被害者、佐藤梢さんとの関係だ。この事件では、もう1人、同姓同名の佐藤梢さんが登場する。女性2人は高校の同級生。小原とその友人が2人をナンパし、小原は、事件の被害者ではない佐藤梢さんの方と昨年2月から付き合っていた。
 こちらの佐藤梢さんは小原の借金の保証人で、小原を被害者とする恐喝事件にも関わっている。
 一方、殺された方の佐藤梢さんと小原は、単なる知り合い程度の関係だ。確かに、殺された佐藤梢さんは死亡推定時刻の前に小原に連れ出され、行動を共にしていた時期がある。しかし、小原には交際もしていない佐藤梢さんを殺す動機がないのである。
私は生き残った佐藤梢さん、つまり、小原の交際相手だった梢さんに話を聞いた。その証言は衝撃的だ。
「梢ちゃんは、私と同姓同名だったばかりに私の身代わりで連れ出されて殺されたのだと思います。そのことは刑事さんも知っています。警察はすべてを知っているのに何かを隠しています」

【さらに意外な展開】「転々」
「 死亡推定時刻も曖昧だ。
 マスコミ報道によると、被害者の死亡推定時刻は、岩手医大法医学講座を持つ後藤泌尿器科皮膚科の後藤医師によって、「平成20年6月30日ごろから7月1日ごろ」と検案されている。
 この間、小原は弟夫婦の家に身を寄せ、高校時代から慕う友人を訪ねたりしている。立派なアリバイがあるのだ。
 ところが、岩手県警宮古署捜査本部はその後、死亡推定時刻を「梢さんが小原に連れ去られた6月28日から遺体となって発見された7月1日までの間」と拡大してしまうのだ。 」

【関係者が口を開きはじめる】「……」
「それはちょっと、前代未聞の光景だった。13日の岩手県盛岡市の教育会館。三陸ミステリーといわれ、謎を呼ぶ佐藤梢さん殺しに関し、ナント、指名手配されている小原勝幸容疑者の関係者が一堂に会し、警察に「しっかりとした捜査」を求めたのである。岩手県警はどう応える?

 殺された佐藤梢さんは殺される直前、小原容疑者に呼び出された。梢さんの遺体が発見されたのは昨年7月1日午後4時半頃。小原はというと、2日午前9時半ごろ、岩手県内の鵜ノ巣断崖で最後に目撃された後、崖に靴などを残し、姿を消す。偽装自殺による逃亡とみた岩手県警は小原を指名手配し、懸賞金100万円をかける。
 これが事件の経緯である。さて、記者会見したのは小原の弟、小原を鵜ノ巣断崖に車で送った親戚H、梢さんの死亡推定時刻に小原と一緒にいた人物、警察が梢さん殺害の現場とみている小原の車(自損事故を起こして放置されていた)の第1発見者O、そして、小原が付き合っていた佐藤梢さん(殺された佐藤梢さんと同姓同名)と、彼女の父親の6人だ。佐藤梢さんはこう言った。
「私たちはみんな警察に不信感を持っています。しっかりとした捜査をして欲しい」
 私は、13日会見に応じた6人を中心に、事件の関係者を総当たりで取材してきた。それで分かったのは、警察の捜査にはいくつものおかしな点があることだ。
 例えば、小原は6月29日に右手を大ケガし、29日の夜7時ごろ、弟夫婦と一緒に病院に行っている。イラだって壁にコブシを打ちつけたのか、握力はゼロに近い状態だった。岩手医大法医学講座が提出した、殺害された佐藤梢さんの死亡推定時刻は6月30日から7月1日だから、この一事で小原の容疑は怪しくなる。しかも、この間、小原は会見にも出てきた人物の家にいて、この友人の家を出た後に自損事故を起こす。警察は、この車こそ殺害現場とみているのだが、自損事故の第1発見者で、車の中にベタベタ指紋を残した人物Oは警察から何の事情も聴かれていない。この人物は記者会見で「疑われるはずの自分が事情を聴かれないのはおかしい」と指摘した。
 さらに、小原が偽装自殺した鵜ノ巣断崖に送っていった親戚H。会見では「断崖に向かった小原は軽装でポケットも膨らんでいなかった」「カバンや靴も持っていなかった」と証言した。だとすると、靴を崖に残した小原はその後、はだしで逃走したことになる。こんなことがありうるのか。
 明らかに誰かが偽装自殺を手伝ったのである。私は、梢さん殺しには別の真犯人がいるとみる。警察はなぜか、その人物について、見て見ぬフリをしているように感じる。その背景に何があるのか。自分たちの捜査ミスを隠蔽するためであるとしたら、到底許されることではない。」

★以上、ゲンダイ・ネット「未解決事件の“闇”に挑む」by黒木昭雄

http://gendai.net/?m=view&g=syakai&c=020&no=41179

http://gendai.net/?m=view&g=syakai&c=020&no=41194

岩手県警は何を隠そうとしているのだろう。
非常に気になる事件である。

【不謹慎な妄想】
普通の本格ミステリなら、この後、小原の死体が見つかり、名刑事の推理で真犯人があぶり出されるのだろうか。ちょっとひねったノワール小説なら、事件は岩手県の政治の暗部に及び、この事件の捜査を指揮する本部長と岩手県のフィクサー、さらに川井村開発事業に絡む政財界の腐敗へと発展して、真相に迫りかけた刑事の前で、真犯人は共犯に射殺され、共犯も自殺して、真に糾弾されるべき人間は高笑い。刑事は理由もなく東京の警視庁勤務に栄転となって、同僚が「東京で元気でな」とか言って別れるシーンで幕となる。1980年代のバイオレンス物なら、犯人に仕立てられそうになった小原は滝つぼに投げ込まれそうになったところを逆に相手を投げ込んで生き延びる。そして盛岡のドヤ街に身を潜め、復讐の牙を研ぐ。そんなとき、ふとしたことから死に掛けのヤクザと知り合い、トカレフ一丁・白鞘のドス一本・米軍の手榴弾三個・現金1千万円を遺品として受け取った。遺品を武器に小原は自分を罠にはめた人物の探索と、その人物への復讐のために立ち上がる。クライマックスは盛岡郊外に広大な敷地を占め、周囲を三メートルの塀で囲んで、常時ヤクザ百人が警備する「砦」に殴りこみかける小原の死闘となる。半村良的な伝奇小説なら、この事件を追っていたフリージャーナリストは、偶然、小原なる人物の家が「大久保家文書」なる文献を保管していたことを知る。どうやら小原はこの古文書の内容を知ってしまったために謀略の罠にはめられたらしい。やがて、小原の死体があがって、その死体に「葵の御紋」が残されていたと知った主人公は「大久保家文書」を追い始める。様々な妨害と奇怪な出来事と戦った末に主人公は遂に「大久保家文書」の隠し場所にたどり着いた。古文書を開いた主人公が知ったのは、孝明天皇は大久保利通に毒殺され、明治天皇も親王時代に毒殺されて、後醍醐天皇の直系の末裔とすりかえられたという、室町時代と幕末、明治をつなぐ恐るべき日本暗黒史であった。愕然とする主人公の前に大久保利通の子孫【現首相】が現われて尋ねる。「ここで川井村事件の真犯人として死ぬか、それとも我々の結社の一員となるか」。・・・半年後、週刊文潮で野党第一党党首のスキャンダルを追う主人公の姿があった。読者に胸焼けのような絶望を与えて「完」。平山夢明さん風のホラーなら【以下、公序良俗に反する妄想が続くため削除/要町奉行所】

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07/06/2009

風雲千早城(1150)

今日も農耕的に仕事をした。

・書けない。

・悔しいので「Masters of Horrors」の続きを見た。

・『男が女を殺すとき』
突然、アメリカ各地で理由のない殺人事件が発生。その被害者は全て女性だった。間もなく世界的にDVが殺人に発展する事件が広がり、コロンビアで害虫駆除をしていた疫病学者はこれが害虫を数世代で根絶させるため生殖本能に干渉する酵素を使うのと同じ方法で「何者か」が人類の根絶を図っているという仮説に行き着く。そうしているうちにも北緯31度より南では女性は虐殺され、男が女を殺す症状の境界線は次第に北上していく。疫病学者もついに発症し、彼の妻はカナダに逃れるのだが…。うーん。小松左京先生のSFに似た味わい。楽しめました。

・『愛と欲望の毛皮』
F・ポール・ウィルソン原作。古えの都市の跡と言われる石造遺跡の残る荒地に罠を仕掛けた親子は上等のアライグマを12頭も手に入れた。だが、アライグマの皮を剥いだ直後、狩人の息子がおかしくなり、父をバットで撲殺して、自分も顔を野獣の罠で潰して自殺した。悪徳毛皮業者がこの毛皮を殺人現場より盗み、毛皮コートを作って、自分のお気に入りのストリッパーにモデルをさせ、毛皮コートのショーに出そうとたくらむ。だが、今度は業者の会社の従業員が、鼻と目と口を自ら縫って窒息したり、自分の腹の皮を裁断して自殺したりする。業者は狩人が罠を仕掛けた荒地に赴き、そこで暮らす変人の老婆から「パインライトは都市の見張り番なのさ」と奇怪な話を聞く。その様子をアライグマの群れが窓から覗いていた。それでも懲りない毛皮業者はストリッパーの許に行き、毛皮を届け、代わりに付き合えと迫る。情事の直後、突然、毛皮業者は包丁を取ると自分の皮を切って「脱ぎ」、それをストリッパーにやろうとする。ダリオ・アルジェント監督だけあって相当にエグい描写が続く。いやあ、流石、アルジェント、まだまだイケそうだね。

・『妻の死の価値』
浮気がバレて、奥さんになじられながら車を走らせる歯科医。突然、眼の前に倒木が現われ、車は横転、歯科医は助かったが、奥さんは大火傷を負った。全身大火傷で二目と見られぬ姿となった妻のため、歯科医は「尊厳死」を依頼するが、妻が死ぬと、その亡霊が眼の前に現われて、蘇生すると怪現象が収まる。そうこうするうちに、姑は記者会見を開いて「婿は娘を殺そうとしている」と発表、弁護士は事故車の助手席のエアバッグが開かなかったのは賠償に値して一千万ドルはメーカーからふんだくれると歯科医に囁き、浮気相手は「奥さんがいなくなったからヨリを戻しましょう」と迫る。さらにそうする間にも、妻が死に掛けるたびに亡霊が現われて…。こう書くとスラップスティックみたいですが、真面目な亡霊モノでした。ただ火傷した奥さんの描写が相当にエグい。しかも奥さんを助けるには皮膚移植が必要という話になり、亡霊とマスコミとマスコミに乗せられた野次馬に追い詰められた歯科医は、目もそむけるおぞましい行為に出る。

・今日の三本はスプラッタ描写が結構アレだったが、ストーリーはよく練られていて面白かった。

・よし、脳に刺激を受けたから、書けるといいんだが。。。

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07/04/2009

風雲千早城(1149)

今日も農耕的に仕事をした。

・昨夜は遅くから朝までPHP文庫の最終チェック17ページを片付けた。疲れた。

・昨日に続いて、Masters of Horrorsの「ゾンビの帰還」と、ラヴクラフト原作の「魔女の棲む館」、さらに「世界の終わり」を鑑賞。「魔女の棲む館」は「魔女荘の悪夢」が原作。三百年前に建てられた下宿の壁が非ユークリッド幾何学的な角度を有してて異次元から魔女とかネズミ人間とかナイアルラトホテップとかがやって来る話を、かなり刈り込んでいたが、なんとなく魔女物にちんまり纏まってしまった感じで、これなら『ネクロノミコン』なんか出さなくとも良かったなあ、と感じた。ごめんね、スチュワート・ゴードン。本当にそう感じたんだよ、ヴィセント・パオリ。

・「世界の終わり」はジョン・カーペンター監督。・・・大傑作。なんと「マウス・オヴ・マッドネス」の外伝というか解釈篇だった。大富豪(ウド・キア)に「かつて映画祭で一度だけ上映されて、大惨事が起こり、業界から封印された幻の映画『世界の終わり』のフィルムを探し出せ」という依頼を受けた主人公がフィルムを求めてフランスへ、カナダへと飛び回る。主人公は元麻薬中毒者で、恋人を自殺に追い込んだ過去がある。原題は「煙草の焼け跡」とでもいうのかな。映画のフィルムには巻をチェンジしろ、というサインに端っこに白い丸(黒のときもある)が付けられている。覚えがあるだろう。映画を見てると時々上のほうに現われる丸である。あれを業界的に煙草の焼け跡というらしい。昔、刑事コロンボでもこの丸の説明があって、それがそのままアリバイ崩しに使われてたの、覚えてないかな。で、主人公も意識の端に、その白い丸が浮かび、自殺した恋人が現われ始めるのだ。フランスでは危うくスナッフ映画(本当に人を殺す映画)の犠牲者に使われそうになるが、意識を失い、気がついたらスナッフ映画監督を半殺しにしていた。この辺、なんとなくニコラス・ケイジの「8mm」を思い出させるけど、ずっと乾いててハードボイルドだ。カナダまで飛んだ主人公はようやく幻の映画を撮影した監督の夫人と出会い、フィルムをもらう。それを大富豪に手渡して約束の二十万ドルを受け取った主人公は、突然、大富豪に呼び出されるが・・・・。ウド・キアが大富豪をやるからには、「悪魔のはらわた」でハラワタにまみれ、「処女の生き血」で血を吐きまくり、「JM」では輪切りに、「シャドウ・オブ・ザ・バンパイア」ではノスフェラトゥに血を吸われた彼のこと、なんか凄い死に方をするだろうと期待してたが、いやあ、期待通りにやってくれました。まんぞく、まんぞく。一時間の枠内できっちりと「マウス・オヴ・マッドネス」で描けなかったことが描いてあるのを見たとき、カーペンターに必要なのは金ではなくて、モチベーションと良い脚本ではないかと思った。今度のは脚本がよかったネ。

・「ゾンビの帰還」は感動的な反戦ゾンビ映画。大統領選挙の投票のためにあの世から戻ってくる死者たちv.s.現大統領のブレーンというアイデアが面白い。だけど後半、メッセージ性が強く出すぎてクサくなったのに、ちと閉口。

・それから、昨日、年下の友人より届いた鬼太郎を鑑賞。モノクロ版の1960年代版「ゲゲゲの鬼太郎」が懐かしかった。60'sと90'sの鬼太郎の「お化けナイター」が見比べられるとは思わなかったね。

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07/03/2009

風雲千早城(1148)

今日も農耕的に仕事をした。


・年下の友人からもらったDVDをいくつか鑑賞した。

・角川ヘラルドの配給で「Mastes of Horrors」という、世界の監督による短編ホラー映画シリーズである。

・本日鑑賞したのは「ワシントン・コード」「ドリーム・クルーズ」「ノイズ」「災厄の街」の四編。順番も同じ。

・一本目の「ワシントン・コード」は大傑作だった。母の急死を知らされて東海岸の古都市に妻子と駆けつけた主人公は、地下室で骨董品の収集家だった父の残したジョージ・ワシントンの肖像画を見つけた。娘がそれを見ていると絵が突然倒れてくる。倒れた衝撃で絵の一部が剥がれ、キャンバスの下から「子供を食って骨でフォークを作ってやる」という古い文書を見つける。母の葬式の後、年老いた隣人にそれを見せると、老人はそれまでの親しげな態度を一変させて「それを売ってやるから預けろ」という。断った主人公のことを街の老人たちが見つめていた。(ワシントンの生誕地に近い古い都市なので、住民も圧倒的に老人が多いのだ)その夜、娘が寝ていると窓が叩かれる。外には独立戦争当時の格好をした老人が立っていた。恐怖に駆られた娘が悲鳴をあげれば、今度は激しくドアが叩かれる。主人公がドアの覗き穴から見れば、独立戦争当時の姿の男たちが四人、「ドアを開けろ」と騒いでいた。生命の危険を感じた主人公が警察を呼べば四人は逃げ去ったが、いつの間にか家の中に人間の心臓が置かれていた。どうやら独立戦争時代の連中は「心臓をやるからワシントンの文書をよこせ」と言っているらしい。主人公は大学時代に学んだ歴史学の教授に連絡する。「独立戦争時代の格好をして、黄色い義歯をしていなかったか」「その通りです」「なんということだ。そいつらはワシントニアンだ!!」やって来た教授に文書を渡し、救いを求める主人公だったが、教授が去った直後にワシントニアンに不意を襲われ、妻子ともに拉致された。気がつけば、ワシントニアンの本部である。そこには母の葬式に集まった老人はおろか、カフェのウェイトレスや警官までが独立戦争当時の衣装をまとい、人肉に舌鼓を打っていた。ワシントニアンとはジョージ・ワシントンの思想と生き方を頑なに守ろうとする原理主義者の秘密結社で、彼らによるとワシントンは人肉嗜食者であったというのだ。建国の父というのは歴史家のでっちあげた「かくあるべきワシントン」にすぎないというのである。そうするうちにも主人公と妻と娘はワシントニアンの晩餐に供されようとする。

(ここでコマーシャルではなく、皆さんに質問です。皆さんなら、ここまで展開した物語をどのように収束させますか? わたしは長女と話し合いました。→グールの宴会を逃れた三人は帰り道で教授の車と遭遇する。助かった、と思った三人の前に教授が独立戦争時代の衣装で現われて、三人を宴会に連れ戻す。(以上・わたしの見通し) →グールの宴会で命乞いをした三人は「助かりたければ仲間になれ」といわれる。半年後、近所に子供を連れた夫婦が引っ越してくると、主人公一家が出迎えて「可愛い子ね。食べちゃいたいくらい」と話す。一家の家の居間にはワシントンの絵が飾られている。(以上・長女の見通し)
・・・どちらも不正解。正解を知りたい方はレンタル店で借りてご覧下さい。『ウソッ』と思わず叫んでしまう驚愕のオチが用意されてます。)

本っ当にこれは傑作だった。いい物を鑑賞いたしました。

・次の「ドリーム・クルーズ」だが、不倫してるアメリカ人の男と日本人の人妻、男には弟を自分の過失で溺死させたという苦い過去があり、人妻には夫が自分と結婚するため前妻を殺したのではないかという疑惑がある。日本人の夫は情緒不安定で、妻がビジネス相手と不倫してることを察している。状況設定終わり。夫は妻とアメリカ人をクルーザーに乗せて遥かな沖に出た。・・・ここまで観たとき思った。
(『ザ・ガードマン』の夏の夜の怪談シリーズみたいだが、ちょっとタルいな。中川信夫や山本迪夫なら悪夢的イメージの釣瓶打ちなのに、えらく月並みなイメージの羅列だな)
で、クルーザーのスクリューに何かが絡まって船が止まり、夫がもぐると途端にエンジンがかかって・・・。と、この辺、演出が上手ければ「うわーっ、見たくない」と客はトイレに逃げるところだが、逃げるに及ばなかった。なんかねえ。ヌルいのよ。トイレが水で溢れて妻が溺れそうになるのは、昔見たハードボイルド映画と、それをパクッた『ビッグマグナム黒岩先生』で二度も見てるので怖くなかったし。前妻の幽霊の造形は怖かったけど、新東宝の『怪談生首情痴事件』の亡霊によく似てたし、いや、それを言うならこの映画自体が新東宝の怪談映画そのままだし・・・。という訳で、二本目は途中で消した。友成純一さんが「Jホラーなんて、お前、あんなもの、目先を変えた新東宝だぜ」と言ってたのを思い出す。

・「ノイズ」はパソコンの苦情センターの課長が愛する息子を失ってから神経を病んで、異常に音に敏感になっていき、ついには妻の寝息にさえイラだって・・・という話。55分持たせるのにはちょっと苦しかったかな。でも音が異様に神経に障る描写は非常にニューロティックでよかった。

・「災厄の街」は、なんと「悪魔のいけにえ」のトビー・フーパーの監督。いやあ、プロローグのちょっと古めのスプラッタ描写が「なんだかトビー・フーパーっぽいな」と思ったら、ビンゴ! フーパー本人でした。中西部の町で1981年二月、季節外れな雷と強風が吹いた。その夜、突如、「やつが俺を見つけた」と叫んで、父親が発狂、散弾銃で妻を射殺した。さらに父親は息子も撃って怪我を負わせ、のちに謎の死を遂げる事件がおきた。それから二十五年後、息子は町の保安官となっていた。父が発狂したその日(保安官の誕生日)、再び、季節外れの風が吹き、雷が鳴り、街の人々が狂い始める。保安官は父の残した形見の箱から古い新聞記事の切抜きを発見した。それは保安官の住む町の近く、スタージェスという町で、祖父が油田を掘り当てた直後、街の人々が殺し合い、大半が死亡したというものだった。そしてスタージェスから脱出した一家こそ保安官の父母だったのだ。死にかけた新聞記者がいう。「あんたの祖父は油田を掘ってて、スタージェスの地下に眠ってたなにかを目覚まさせてしまったんだ」
それを聞いた保安官はケラケラ笑いながら記者を射殺する。保安官もなにかに見つけられたのだ。正気を取り戻した保安官は妻子を逃がす。だが、その直後、地下から石油とともに「なにか」が立ち上がり、保安官を惨殺した。必死で逃げる母と息子。・・・と、ガス欠になる。悲鳴をあげる母子に黒いなにかが迫り、車のガラスが叩き割られるところで、ジ・エンド。さすが、巨匠トビー・フーパー、女子供は殺さないなんていうハリウッドの掟なぞ歯牙にもかけなかった。まるで友成さんの作品を読んだような後味の悪さを感じつつ、
「笹川吉晴氏がこれを見たらぜーーーーーーったい『大傑作』と狂喜乱舞するだらうな」
と思ったのだった。


・俺は「ワシントン・コード」観たから、いいや。

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07/01/2009

風雲千早城(1147)

今日も農耕的に仕事をした。

・7月1日水曜日。薄く曇った空の下、わたしは、ふと思い立って「六天社」を詣でるため、新宿区落合に向かった。8月初旬にPHP文庫より出る『本所お化け坂 月白伊織』の成功祈願である。この作品の主人公・月白伊織は、本所に時々現われるお化け坂の上にある第六天社の神宮寺に居候しているのだが、怪奇な事件に翻弄され、本当に困っている人の前にしか本所お化け坂は現われない。どうやら月白伊織は、第六天魔王の命令で人間界に留まり、魔界で何かやらかして人間界に逃げてきたモノカミどもを狩っているらしいのだが、作品ではハッキリと記されない。伊織の相棒は太郎といい、表向きは子供ということになっている。しかし伊織と二人きりになると、太郎は魔界の生体レーダー「ミエタロウ」となって、モノカミの隠れている位置を探知するのである。──こんな設定なので、まずは勝手にお名前を使わせて頂いたことを断り、ついでに「この本が地獄のような不況下でも売れますように」との願いを込めて、六天社詣でを企図したという訳だ。

・さて、落合には二つの「六天社」がある。
 一つは中落合にある「第六天社、もう一つが下落合にある「大六天社」である。ものの本によると第六天魔王信仰は織田信長が広め、愛知県内にはそこそこの第六天社があるらしい。対して、関東にある第六天社は北条氏が広めた信仰らしい。両方とも信仰の初期には、かの第六天魔王を崇めていたものと思われるが、時代が下って、魔王から他の神様に信仰対象が変更となったようである。

・我が家から参詣するには中落合の「第六天社」が近そうなので、妻と二人、千早町から椎名町を経由して中落合に向かった。椎名町は、かの漫画家のメッカ「トキワ荘」を横切り、ひたすら歩き続けた。わたしは左足に麻痺が残っているので、この距離が結構しんどかったが、なんの、後に訪れる坂道地獄に比べれば平坦なアスファルト道、実はたいしたことがなかった。

・地獄は見晴坂からはじまった。「見晴坂」と書いて「みはらしさか」と読む。中落合にある住宅地を貫く坂道である。まあ、この坂道のしんどいこと、江戸時代には坂を上れば富士山が見えたというだけあって、足の悪い身には静岡県まで続くかと思われた。おまけに道幅が狭い。宅急便のトラックが来るたびに引っ掛けられるようなスリルが味わえた。

それでも090701_1坂道を登って上ってのぼって行ったら「六天坂」という木の柱が立っていた。おお、近い。目指す第六天社は近いぞ。物凄く急な坂道を下って、妻は先に進んでそれらしい神社を捜し求めた。・・・やがて見つけた。小さな小さな祠を。090701_2
お屋敷の庭の一角に設けられた祠に「第六天社」と記されていた。急な坂にその名が冠されるくらいだから、もっと大きな神社と思ったが、なんと祠だったとは。ただし、よくある屋敷の敷地にあるお稲荷さんの祠とは違って、こちらは、ちゃんと公道に祠は向けられて090701_3いる。つまり万民に開かれている訳だ。やれ有難たや、と記念撮影して、ついでに拝ませてもらった。ただし、賽銭箱がなかったので、お賽銭はあげられず。(代わりに下落合の六天社にお賽銭あげさせてもらいます)と断って、まずは、目的の半分は終わった。 

・そこから下落合に向かったのだが、途中、恐るべきことに気がついた。第六天社のちょっと下に、もう一本、「六天坂」の標識が立っていて、そこから平坦な道をちょっと行けば、見晴坂の入り口になっている。つまり、わたしたちは、あの急で狭い見晴坂を上ったり降りたりする必要はなかったのだ。
(しかし、これはゲンがいいぞ)と、わたしは思った。
(なんだか“本所お化け坂”を本当に上ったみたいじゃないか)
そうとも、わたしたちはお化け坂を苦労して上り、第六天社に参詣したのだ。・・・ところで見晴坂に行く途中、不思議なことがあったのを思い出した。それは何処からともなく、お神楽のお囃子が聞こえてきたことだ。多分、近くの神社の祭礼が近くて、お神楽の練習でもしていたのだろうが、初めての神社(祠だったが)に参詣する身にはとても縁起がいいように感じられた。そして、六天坂を下りきったときには、今度は鉦(かね)を叩く音が響いてきたのである。昔はお百度参りをして、神様が「汝の願い、聞き入れたぞよ」という時には、きっと鉦の音や、それに類する音や光、縁起のいい鳥の声などがしたというが、これらの音がそれに類したものだったら嬉しいな、と、そろそろ痛み出した左足を引きずりながら思った次第。


・中落合から下落合には聖母病院の前まで行き、聖母大学の横を通っていった。こちらは坂は少ないが、普通の住宅地である。正午すぎは人通りも少ない。なんとなく後ろめたい気持ちを感じながら、妻の後に従った。

090701_7 ・大六天社はすぐに見つかった。こちらは小さいながらも敷地を有し、木製の鳥居が立って、白地に黒く「大六天社」と記された幟(のぼり)も並んでいる。鳥居を潜って、短い参道を進んだ行き当たりに小さな社があった。おお、ちゃんと御賽銭箱もある。わたしは喜んでお賽銭をあげたのだが、090701_5 シンクロニシティか、一円玉がきっちり六枚あるではないか。
(きっと、これをあげるべし、という意味なんだろう)
 と思って六円を捧げ、しっかり『本所お化け坂 月白伊織』の成功を祈願した。ついでに写真も撮影し、さあ帰ろうかと思って、ふと記念碑を見れば、「大六天社の祭神は猿田彦尊」とある。立原とうやさんが「猿田彦尊さまは道案内の神様だから人脈や仕事を運んでくれる」とおっしゃっていたのを思い出し、魔王尊とは別に、猿田彦尊にも賽銭をあげ、祈りを捧げた。090701_8

・かくして二つの六天社への参詣はつつがなく終わった。雨に降られなくて助かった、というのが真実、ホンネである。なにしろ、普段あまり歩かないので、完全に左足が弱っていて、千早町に戻るときには、いつ左足首がグギッとなるか、捻挫するか、と気が気ではなかったのだ。

・しかし、落合は赤塚不二夫先生の縄張りであるだけでなく、船橋聖一邸もあれば林芙美子記念館もある。洋画家や文学者の邸宅がいっぱいある。横道に入ったときに「吉田健一」という表札を見たが、あれはまさか、あの吉田健一の邸宅であったのだろうか。などと色々と収穫の多かった七月一日なのであった。

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06/29/2009

風雲千早城(1146)

今日も農耕的に仕事をした。

【“黒い一万円札”を格安で販売 新手のニセ札詐欺にご用心】
(週刊文春 2009年7月2日号掲載) 2009年6月28日(日)配信

「これは一万円札を黒く着色したものだが、“特殊な薬品”を数滴垂らして、電子レンジで十秒加熱すると、中から本物の一万円札が現れる。その“黒い一万円札”を格安の値段で売ってあげる……。

 こんな触れ込みの詐欺被害が広がる可能性があると警告するのは、ニセ札鑑定家で、松村テクノロジー社長の松村喜秀氏だ。実は五月以降、松村氏のもとに、複数のルートから黒い一万円札の鑑定依頼が持ち込まれているという。

「日本人、それと東南アジア系の人物から、本当に一万円札を着色したものなのか、鑑定の依頼を受けました。実際、ある薬品を使うと紙幣を黒く着色することは可能ですが、鑑定の結果、この黒い紙は一万円札を着色したものなどではなく、ただの黒い紙だとわかりました。私はこれが詐欺の道具に使われているのではないかと心配しています」(松村氏)

 というのも、過去にも同じような詐欺事件が起きているからだ。それは、アフリカの軍事政権がODA資金の一部のドル札を黒く着色して、隠匿していたとする“ブラックドル”を使った事件。そして、今回、日本円を使った“黒い紙幣”が初めて現れた。

 松村氏に鑑定を依頼した人物とは現在連絡がとれず、彼らの立場や鑑定依頼の目的は明らかではないというが、今回の詐欺の手口はおよそ次のようなものだという。

イタリアに、国外に持ち出すために黒く着色した四億円分の一万円札がある。そのうち約一億円分を日本に持ち込んだ。一枚五千円で売る。ただ、元の一万円札に戻すには特別に調合した薬品が必要で、これに約三百万円かかる――。

 とても信じられない話だが、実際に薬品を使って復元したとされる、洗濯機で洗った後のようなゴワゴワした一万円札(本物)まで存在する。

「一人はトランクにぎっしり詰まった黒い紙を見たと言っていますし、七千万円分とされる黒い紙を三千五百万円で買った人がいるらしいとの情報もあります」(同前)

 今回、別々のルートから持ち込まれた黒い紙の裁断跡がまったく同一であることから、その製造元は同じとみられる。組織的な詐欺グループが存在している可能性もあるため、「警戒が必要」と松村氏は話している。 (西島博之)
http://news.nifty.com/cs/topics/detail/090629158384/1.htm


★この記事を読んで真っ先に思ったこと。
(異様にニセ札に詳しいおっさんが犯人でないの)

★★『小説凸凹』の編集会議。
編集長「これをネタにしてもらって誰にどんな小説を依頼しようかな?」

老編集者「やはり大藪春彦先生に『唇に微笑、ポケットに偽札』というタイトルで・・・」

編集長「大藪先生は亡くなったよ。却下」

中堅「馳星周先生に『汚れちまった悲しみ』というタイトルで・・・」

編集長「もう新潮か幻冬舎が頼んでそうだから却下」

新人「これはパラレルワールドの札という話にして『電脳マネー』ってのはどうでしょう」

先輩「電脳マネーって、ただのsuikaじゃねえか。それよりホラー仕立てで『呪札』ってタイトルで映画監督の清水崇に依頼してはどうです。話題も呼べますよ」

編集長「そういうのは早川か角川に任せろ、却下」

老編集「最近注目されてる西村寿行に『蒼茫の日銀、滅ぶ』というのを」

編集長「寿行さんも亡くなったってば。オヤジさん、そろそろ引退したほうがいいな、却下却下」

中堅「国際謀略小説で『たゞ富の為でなく』というのを落合信彦に…」

編集長「だから、そういうのは、もう集英社が頼んでるってば」

新人「ラノベ乗りにしてはどうですか。高校生の男子と女子がニセ一万円札にだまされる話で『だまされタワー』!!」

先輩「駄洒落かよ。それなら『セーラー服と利かん札』だろう」

新人「なんか出来合いのAVみたいなタイトルですね」

先輩「なんだと、このヤロ」

編集長「はい、そこ、喧嘩しない。どっちも却下」

老編集「最近、私が注目してるハード・ボイルド作家に矢作俊彦というのがいまして早川で漫画なんか描いてお茶引いてますから『燃やしたい』というタイトルで…」

編集長「矢作さんは書かないって。却下」

中堅「そうだ。第一回凸凹賞を受賞してから、ずっと『小説凸凹』でメイン張ってくれてる又藻個之人先生に、新しいペンネームで書いてもらうってのはどうです」

編集長「お、それはいいな。どうせ又藻さん、ウチ以外からはオファーが来ないから二つ返事で書いてくれるぞ」

老編集「だったら、売れてる作家と間違えやすい名前にしてもらってはどうですか。村土春樹とか」

編集長「冴えてるね、流石はオヤジさんだ。じゃ、タイトルは『IQゼロ』にしよう」

老編集「『統合札』ってのはどうです。松本清張先生のパクリで…」

編集長「分かった。分かった。オヤジさんが松本清張さんから書き下ろしをもぎ取った話は居酒屋で聞こう。よし、みんな、会社の経費だ、村さ来でパーッとやるぞ」

老編集・中堅・新人・先輩「わーい」

社長「(首吊りの縄に首を通しながら)誰か、足引っ張ってくれ~」

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06/25/2009

風雲千早城(1145)

今日も農耕的に仕事をした。

・昨夜も遅くから朝まで仕事。
・一行書いては「なんだ、これは」と舌打ちし、一語書いては「こんなんじゃない」と頭を抱える。一休の短編を書くときはいつもこうだ。最初は楽しかったのだが、次第にのたうちまわるようになって、今は仕事場の天井に首吊りロープを何本も吊り、パソコンの隣に頭を撃ちぬくための拳銃を何丁も並べ、さらに毒薬の瓶をずらりと並べる、そんな感じだ。【ホントにやってる訳ではない。大体そんな暇があったら一枚でも書いてるわ】年をとると自分の才能の全体が見えてくる。全体が見えれば自然に出来ることも出来ないことも見えるし、おおよその未来も見えてしまう。だから、すぐに壁にぶち当たり、「テメコノ畜生」と壁をけり続けるのだ。まったく俺様意識の作家志望者がうらやましい。

・入院中、パソコンに接することなく、ひたすら寺山修司を読み続けたが、あれは良い刺激になったな。今度は吉田一穂の詩集とか鷲巣繁男の詩論・宗教論にでも接してみようか。学生時代は三分の二は自己満足・あとの三分の一は虚栄で手にしたが、この歳になったら、もっと真摯に読むことが出来そうな気がする。

・お礼。
末國善巳さん編纂「野村故堂 伝奇幻想小説集成」を賜りました。銭形平次だけではない故堂の魅力と全体像を堪能できる一冊です。定価は6800円作品社より限定1000部で発売中です。

・午前11時頃に元ソノラマ編集長のIさんより電話。生憎、当方は睡眠中だった。昼食後に、こちらから電話する。七月に会おうという話で切った。

・午後2時、某社のФ氏に電話。ごめんなさい。真面目に生きます。
 ♪誰が呼ぶ声にこたえるものか 祈る気持ちと裏腹
  今はもう隙間風を手で押さえ また 生き恥をかく♪

・蒸し暑くて、疲れやすい。気圧をダイレクトに脳に感じる。いっそ早く夏になってしまえばいいのに。

Av00817 画像はネットで見つけた懐かしいカセット本。これ、二本もらって、一本は吉水都英のモデルにあげた。モデルのスニーカー坊主はお寺でこのカセットを大音響でかけて楽しんでいたという】

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06/21/2009

1Q84の思い出

・国書刊行会で定本ラヴクラフト全集を刊行しはじめたのは1984年10月下旬からのことだった。奥付には「昭和59年10月24日第一刷発行」となっている。マニアックな編集者としてはハローウィンに店頭に並べたかったのだ。

・だから定本全集刊行記念の「ラヴクラフト・フェスティバル」(草月ホール)はハローウィン・パーティーの気持ちだった。

・ところで、刊行に先立つ二ヶ月ほど前、こちらは取次や書店にばらまくためのパンフレットを作らなければならなかった。

・国書のパンフの特徴は豪華な推薦者陣にある。それまで幻想文学大系やメルヴィル全集に比べられて社内でゲテモノ扱い(稼ぎはホラーやオカルト書のほうが圧倒的に多かったのだが、社長も幹部もブンガク的だった)されて屈折していた私は、「なら、貴様らが腰を抜かすような人物に推薦をとりつけてやる」と誓った。

・そして連絡したのが、田中光二氏と、村上春樹氏だった。田中氏に関しては不思議なことに推薦文をご依頼したときの記憶がすっぽ抜けてるが、村上春樹氏に関してはよく覚えている。

・秘密のルートで知り得た番号に電話して、「ラヴクラフトのオリジナル・テキストをS・T・ヨシが校訂したテキストの版権を買い、これを元に翻訳を進めた完全な全集です」と説明すると、村上氏は静かな調子で「わかりました。ラヴクラフトは好きな作家です。推薦文を書きましょう」と二つ返事で承知してくれた。そして「原稿を取りに来てください」と続けられたのだった。

・ところで、わたしはこの時点において、村上春樹氏の小説を読んだことがなかった。ただ、村上氏がラヴクラフティアンであること、奥様もクトゥルー神話やラヴクラフトがお好きであること、この二つをラヴクラフティアンのネットワークで知っていただけだった。考えてみると、こんないい加減な編集者などあるものではない。また、1984年当時、すでに村上春樹氏の文名は高く、いずれ日本を代表する文学者になると言われていた。それを知らずに「ラヴクラフティアンだから」という理由で天下の村上春樹に連絡し、推薦文を依頼するなど、今考えたら、恥ずかしくて三日くらい毛布をかぶって世間から隠れていたいくらいだ。

・だが、それをわたしは行った。

・そして、あろうことか、また電話して、「すみません。目下、ラヴクラフト・フェスティバルの準備に忙しくてお原稿を取りに伺えませんので編集部の者をやります。よろしくお願いします」と連絡したのだった。寛大な村上春樹氏は受け入れてくれ、わたしは村上氏の当時のご自宅の近くに住む新入の女性社員に言った。「あ、村上春樹先生のお宅に原稿受け取りに行ってもらえる?」女性社員は叫んだ。「村上先生のお原稿をわたしが受け取りに行っていいんですかあ!?」わたしは答えた。「ほんじゃ、よろしく」

・かくして、わたしは一生に一度あった「村上春樹氏に直にご挨拶するチャンス」を新入社員に譲り、草月ホールのスタッフとの打ち合わせに出かけてしまった。

・こうして頂いた村上春樹氏の定本ラヴクラフト全集への推薦文は以下の通り。パンフレット自体、今では入手不可能であり、かつ現在のラヴクラフティアン諸氏も膝を打つ指摘がある名文なので下にあえて引用してみる。【定本ラヴクラフト全集パンフレットより】

「僕にとってラヴクラフトという存在はひとつの理想である。
 しかし、もちろんそれはラヴクラフトの小説が理想的な小説であることを意味しているわけではない。ラヴクラフトの小説は決して理想的な小説ではないし、ある場所での彼の小説は小説でありつづけることを放棄しているかのように思えるほどである。
 それにもかかわらず我々小説家は──という言い方がまずければ少くとも僕は──ラヴクラフトを手にとるたびに、小説を読むことの喜びの髄とも表すべきあのすさまじい戦慄を身のうちに感じないわけにはいかないのだ。ラヴクラフトを読むことは、ひとつの総体的な体験である。彼の小説が小説であることを放棄するとき、我々もまた単なる読者であることを放棄し、地図のないラヴクラフトの闇の迷路を彷徨うことになるのだ。
 二十世紀の現代作家たちが意識性と無意識性というふたつのファクターのあわせ鏡で苦悩しているとき、ラヴクラフトはまったく別の個人的深淵を押し開いていたのである。
                                        村上春樹     」


・村上春樹氏がR・B・ジョンソンの『地の底深く』という短編(ニューヨークの地下鉄を食屍鬼が徘徊して地下鉄事故を起こす物語)に作家としてのイマジネーションを掻き立てられ、よく似た存在を、現代社会の闇あるいは悪意の象徴として用いられたことはよく知られているが、それ以上に村上氏は、クトゥルー神話という多重的な時空を有した絶望の宇宙誌に、現代という「地図のない」「闇の迷路を彷徨う」我々現代人の象徴を読み取ったのではないだろうか。

・村上春樹氏の最新作『1Q84』に「リトル・ピープル」というアーサー・マッケンやロバート・ハワードの怪奇小説でお馴染みの存在(同時にそれらはクトゥルー神話と英国怪奇小説とのボーダー作品でもお馴染みの存在である)への言及があると知ったとき、わたしは咄嗟に『1Q84』を読み解く鍵が、他ならぬ1984年に書かれた定本ラヴクラフト全集への推薦文に隠されているのではないか、と思ったのである。

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